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第6799号

【主な記事】

高齢者向け新サービス
日本郵政グループが実証実験
山梨、長崎で10月にも開始

 近い将来に予測される超高齢化社会に対応する先進的なビジネスモデルを創造しようと日本郵政グループがIBM社、Apple社と連携する高齢者向け新サービスの実証実験が10月中にも開始される見通しとなった。山梨県と長崎県に住む親世代を対象にタブレットを配布し、生活全般でどのような見守りニーズが求められるのか、使いやすさなどを検証して、改善を図った上で本格展開を目指す。現在、2県内の老人クラブなどを通じてコミュニティ単位で顧客を募集している。1000人ほどの検証結果を踏まえ、来春以降の本格展開に向けて最善なサービスの在り方を探っていく。

 日本郵便は10月から「郵便局のみまもりサービス」の実施エリアを拡大した。新たに加わったのは千葉県の鴨川市、君津市、南房総市、鋸南町の47局、東京都のあきる野市、日の出町、檜原村、大島町、利島村、新島村、神津島村の26局、新潟県佐渡市の32局、岐阜県の郡上市の14局、和歌山県の海南市の一部、紀美野町、有田川町、那智勝浦町、太地町の31局、愛媛県の愛南町の12局、沖縄県の国頭町、大宣味村、東村、今帰仁村、本部町、伊江村、伊平屋村、伊是名村の9局。
 これにより全13支社管内の738局でみまもりサービスが実施されることになった。
 基本サービスの定期訪問、24時間電話相談、かんぽの宿の宿泊割引などのほか、オプションサービスの一つとして、セコムや綜合警備保障と協力して24時間体制で対応する「駆けつけサービス」も10月から開始した。料金は警備会社2社でサービス内容の枠組みに若干相違があるため、1800円(税別)~3100円(税別)となる。
 10月中にも開始される高齢者向け新サービスの実証実験は、既に「郵便局のみまもりサービス」が全域で実施される山梨県と長崎県で親世代の参加者を募集。親子などへのセットサービスとなるため、親世代の実験参加者は2県の在住者に限って募集しているが、子世代の参加者は東京都、神奈川県、福岡県在住者に呼びかけられている。ただし、子世代については親などを見守りたい対象者が山梨か長崎の両県に住んでいれば全国どこからでも申し込める。
 実証実験の参加者となる親世代側にはIBM社、Apple社が開発した新しい高齢者向けの専用アプリとタブレットが無償で配布され、子世代は自らのスマートフォンに専用アプリをダウンロードして実験に参加。先進のITCを活用した新しい高齢者向けサポートサービスと郵便局社員などが高齢者に直接接触しながら会話を通じて生活状況を確認するサービスを融合させることで、高齢者が孤独を感じずにサポートが受けられる仕組みを構築することを目指す。
 9月25日に日本郵便が行った記者会見では、営業部の西嶋優企画役(トータル生活サポート事業室長)が完成しつつある高齢者向けアプリをイメージ画面の画像を使って説明した。
 タブレットのホーム画面は「〇〇さん、おはようございます」と表示され、「おくすり」「つながり」「買いもの」などから選択してスタート。メニューのうち「健康確認」は、毎日設定された時間になるとホーム画面が登場し、「〇〇さん、いかがお過ごしですか?」と音声が流れる。仮に体調が良くない時は「あまりよくない」をタッチすると「いつもの調子ではないようですね どなたかに連絡しますか?」と音声が流れ、画面にも表示される。
 次に「大丈夫です」と「〇〇さんに連絡する」の選択画面が表示され、「連絡する」を選んだ場合、娘や息子、あるいは知人など登録した人の顔が並んだ「つながり」の画面が現れる。名前で呼び出したい人の顔部分にタッチすると、タブレットがテレビ電話の役目を果たし、互いに相手の表情を見ながら話すことができる仕組みだ。
 また、買い物サービスの画面ではまず「店舗選択」をタッチし、例えば「スーパー〇〇」を選択すると「生鮮食品」「惣菜」「飲料」「冷凍食品」「日用品」「医薬品」「その他食品」などの画面が現れ、「飲料」を選んだ場合に「ミネラルウォーター」「ミカンジュース」など様々な飲料の選択画面が現れる。
 実証実験の参加費用は「郵便局のみまもりサービス」の基本料金が月額1980~2480円(税別。訪問時間が30分か60分かで差異。オプションサービスを加えた場合は上乗せ)がかかるのみで、タブレット代金と通信費用分については無償となる。
 現時点で山梨県と長崎県におけるみまもりサービス利用者は約120人。募集をかけることで1000人まで増やし、多くの意見を聴取できるようにする。必ずしも親子関係でなくても、例えば老人クラブの仲間内で使うことで一人でない環境を作ることができるため、実験参加者の組み合わせの制限は設けてはいない。買い物サービスの支払い方法は代引きになる予定。配送は地域によって店舗が近い場合は店舗からになるケース、離れている場合は郵便局社員がゆうパックで届ける場合も想定しているという。
 西嶋企画役は「大まかな機能は服薬確認、健康確認、買い物支援の三つある。高齢者の方にタブレットを使ってもらうのはハードルが高いことから、できるだけシンプルで分かりやすくしている。どの程度使っていただけるか、操作感やどのメニューが良かったなどの結果を踏まえながら次の展開を考えていきたい。高齢者にとっても常に見守られているというしっかりとした安心感が得られる仕組みを構築したい」と意欲を示した。


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