「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6799号

【主な記事】

西室社長
株式の価値を高める
超高齢社会に先駆的な対応も

 日本郵政の西室泰三社長は9月25日の記者会見で、金融2社を含めた3社の上場について「郵政民営化が本当に国民のためになるように前向きな形で上場計画を創り上げた。経営の自立と自由度拡大という大きな目標に対し、新しい形で将来がしっかりと説明できる日本郵政グループへと変革したい」と意欲を示した。また、「超高齢社会に先駆的に取り組む企業としての存在価値を高め、介護の問題に正面から取り組みたい」と強調。多くの郵便局長が取り組む認知症サポーター資格取得などにも「前向きに進めていただくことを非常に期待している」と語った。





 西室社長は10月から郵便局のみまもりサービスの実施エリア拡大とサービスメニューの拡充と共に、かんぽ生命の普通養老保険「新フリープラン(短期払込型)」の販売を開始し、終身保険「新ながいきくん」の加入年齢範囲の上限を引き上げることを発表した。また、注目されるIBM社とApple社との連携による高齢者向け新サービスの実証実験を10月中にも山梨県と長崎県で1000人ほどを対象に試行する方針を明らかにした。
 西室社長は「山梨県及び長崎県の地方公共団体の協力を得て、老人クラブ、コミュニティ単位で利用者を募集している。実施地域に家族が住んでいることが想定される東京都、神奈川県及び福岡県では親を心配する子ども世代の利用も募集している」と説明した。
 郵便局のみまもりサービスは、10月1日から関東、東京、信越、東海、近畿、四国及び沖縄の各支社まで実施エリアを拡大し、実施局を7月時の1道5県56市町村の567局から1都1道11県83市町村の738局に増やした。また、セコムや綜合警備保障と連携し、契約者などからの要請に応じて警備会社の社員などが駆けつける「駆けつけサービス」を9月28日から開始した。
 かんぽ生命の普通養老保険の短期払込型は、保険料の払込期間を10年と短くし、保障期間を15年にすることで貯蓄性を高めたいという顧客ニーズに応える商品。終身保険のうち加入年齢を引き上げるのは、定額型終身保険は65歳だった上限を85歳までとし、2倍型終身保険は60歳から65歳、5倍型終身保険は55歳から60歳、特別終身保険は65歳から70歳まで引き上げる。
 西室社長は「日本郵政グループは、超高齢社会に向けて先駆的に取り組む企業でありたい。これらによって新中期経営計画が掲げる新契約保険料500億円の達成にもつながると思う」との見方を示した。
 11月4日に予定される日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場については「民営化の議論が始まって10年。これまで制度変更によって確かな未来を見据えることができなかった。目標も社長もずいぶんと変わった。私自身は2012(平成24)年5月、改正郵政民営化法の成立を見届けて郵政民営化委員長に就任した時が郵政事業との関わりの始まりで、翌年に日本郵政社長への就任を要請いただいた。経営の自立と自由度拡大という大きな目標に対し、新しい形で将来がしっかりと説明できる日本郵政グループへと変革したい。上場はそのプロセスの集大成。グループの役員、社員の皆さんの理解と協力を賜りたい」と振り返り、決意を語った。
 記者団からの「現段階での投資家の受け止め方をどう感じるか」との質問に対し、西室社長は「国内の多くのお客さまに資産株として所有いただきたい。そこに一番ターゲットを置いている」と答えた。また「生保会社の再編や海外進出の動きもあるが、かんぽ生命としての対応策は」には、「具体的なものはないが、国際的な展開を避けて通るとは考えていない。日本社会と保険事業の今後を考えていくと介護の問題に正面から取り組む必要がある。これをできる限り早く進めていきたい」と強調した。
 「IFRS(国際会計基準)への移行はいつごろか」には、「決めていないが、準備のための作業は始めている」と述べた。
 「小さな単位を含むとかなり子会社が増えているように思えるが、企業価値向上から見た効果とは」には、「既にある子会社をどのような形で存続させるか、抜本的な検討を行っている。それぞれできる限りミッションを分かりやすくしたい」とした。
 「さらなる成長戦略を上場後に打ち出したいということか」には、「お客さまから見て存在価値がある会社にどんどんなっていかなければならない」と強調した。
 「直近で限度額を引き上げることが金融2社の収益と企業価値向上につながるのではないか」には、「結果として多分マーケットが決める。我々が提示するスケジュールの間に、限度額について新しい政府の決定がなされるとは正直思っていない。上場後もさらに様々検討していただけると理解しており、今それをやるよりは金融関係の事業がスムーズになるように各地の金融機関と一緒に仕事ができる関係にならなければならないと思う」との見通しを示した。
 「9月11日の郵政民営化委員会で金融庁が、ゆうちょ銀行のビジネスモデルについて『規模の大きさが運用の高度化などの制約になる』と言ったようだが、長期的に残高は減っていくと見てよいのか」には、「預かり資産は成長していくが、貯金という形だけで増やすことはしない。しっかりとした方針で資産運用とリスク管理を見直しながら進めようとしている。基本的な考え方は『どれだけ預金者の方が便利になるのか』だ」と指摘した。
 通信文化新報の「郵便局長が認知症サポーターの資格を取る動きも見られるが」には、「高齢化社会への対応を常にできる会社でありたい。そうした中で、認知症サポーターの資格を取るなどの対応は大切なため、前向きに進めていただくことを非常に期待している」と語った。


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