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第6797・6798合併号

【主な記事】

日本郵政グループ11月4日に上場
個人投資家に重点販売
初回売出し株式は1割

 東京証券取引所は9月10日、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命3社の上場を承認した。政府が日本郵政、日本郵政は金融2社の株式の有価証券を発行し、11月4日に3社同時上場する。初回売出しは発行株式の1割ほどで、3社合わせた売却収入1兆3875億円は東日本大震災の復興財源とする。販売割合は国内8、海外2とし、国内のうち95%は個人投資家向けに販売する。日本郵政の株式は13万5000円から、3社すべてを購入した場合も約49万円から取得できる。長期にわたって地域に根差す日本郵政グループの特性を活かし、安定株主となる国内個人投資家への販売を進め、貯蓄から長期投資のすそ野拡大にも貢献していく。

 上場へのプロセスを開始した9月10日時点の1株当たりの想定売出価格は日本郵政1350円、ゆうちょ銀行1400円、かんぽ生命2150円。購入単位は100株からで、3社すべてを購入した場合もNISA(少額投資非課税制度)の枠内で収まる格好だ。1株当たりの株価に売却株式数(3社とも発行済株式数の11%)を掛けた売出総額は1兆3875億円。NTT、NTTドコモに続く売却規模を想定している。
 政府は日本郵政の株式の出資比率が3分の1超になるまで3回ほどに分けて売出して復興財源4兆円を確保する方針。初回の売却収入は日本郵政、金融2社含めて復興財源に充当する。2回目以降、日本郵政の収入は復興財源とし、金融2社株式は日本郵政の成長戦略に使われるほか、自社株買いなども含めた株式価値の維持に活用され、一部復興財源に充てられる可能性もある。
 9月10日から証券会社は目論見書を使って投資家への勧誘を開始した。機関投資家に当たりながら価格を決め、10月7日には仮条件に基づいた複数の価格を提示する。金融2社は8~16日までブックビルディング(投資家に対する需要状況の調査を通じて需要の積み上げを行い、その結果に基づいて売出価格を決定)を行い、19日に売出価格を公表する。日本郵政は8~23日まで同様に行い、10月26日に売出価格を決定し、3社の正式な売却規模が明らかになる。
 販売割合は国内8割で、海外が2割。国内のうち95%は個人投資家を想定し、5%を機関投資家としている。配当性向も通常より高めを目指しており、株価の大幅な上昇より、長期に安定的な推移を望む個人投資家が保有しやすくする。
 昨年、財政制度等審議会国有財産分科会(佃和夫分科会長)がまとめた「日本郵政の株式処分の在り方」の答申でも「広く国民が所有できるよう広い範囲の投資家を対象に円滑に消化できる方法により行う」と明記された。
 答申発表時に財務省は「長い間地域に根差してきたことで顧客との関係が密接。国内個人投資家への販売をしっかり進めていきたい」と方針を示していた。
 上場承認を受け、3社は2016(平成28)年3月期の通期見通しについて、連結の経常利益を8600億円、ゆうちょ銀行4600億円、かんぽ生命3500億円と発表した。
 財務省が行った10日の記者会見では、記者団からの「想定売上価格に基づく時価総額は」との質問に対し、財務省は「一株当たりの想定売出価格から割り出した場合に日本郵政が6兆1000億円、ゆうちょ銀行が5兆2000億円、かんぽ生命が1兆3000億円になる」と答えた。
 「金融2社の株式を50%まで段階的に処分するのは復興財源4兆円確保の期限となる2022(平成34)年度を目指しているのか」「最終的に100%処分していくのか」などには、「全く関係ない。投資家に説明する時に、そこまではしっかりとやっていきたいとの日本郵政の方針を示すという趣旨」「法律の規定は100%目指すと言っている。それ以上縛るものはない」と強調した。
 「3社同時上場となった理由は」には、「通常の親子上場は親会社が先のようだが、日本郵政グループの場合は日本郵政にとって金融2社が大切な価値を占める。子会社の企業価値が分からなければ親会社の価値が見えない。一方で復興財源の早期確保も求められ、親会社も早期の処分が求められているため、二つの要請を同時に満たす上場スキームに至った。ブックビルディング期間が日本郵政の方が金融2社より長い理由も同様」と述べた。
 「11月4日を上場日を決めた理由は」には、「11月13日に中間決算発表があり、決算をまたぐとデータが変わってしまい、やり直さなければならないため」と説明した。
 「3社のPBR(株価純資産倍率)の試算値は」には、「時価総額を前提に純資産で割れば出せる。日本郵政が6.1兆円を15.4で割ると0.394。ゆうちょ銀行は分子が5.25、分母の自己資本が11.5兆円で0.456、かんぽ生命は分子が1.3、分母が2兆円で0.647」とあくまで計算上のものであることを強調した。
 「国内個人投資家95%というのは、通常のIPOより個人にシフトしていると思われるが」には、「改正郵政民営化法の附帯決議に『広く国民が保有できるように努める』と盛り込まれ、それを受けた分科会委員らが、国内で知名度が高く、国民が身近に感じる企業の上場のため、個人に厚くした方が良いと考えた」と語った。


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