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第6793号

【主な記事】

最終答申へ議論大詰め
総務省情通審郵政政策部会
ユニバーサルコストの審議

 総務省の情報通信審議会郵政政策部会(村本孜部会長)は8月13日、「郵政事業のユニバーサルサービスの確保方策」の最終答申案に向けたたたき台を示した。短期的には日本郵政と日本郵便の経営努力と政府がインセンティブを付与する施策を講じるとし、中長期的にはユニバーサルコストへの「検討を継続する」としている。日本郵政グループは同業他社と同じように税などを支払い、政府の施策によって会社間窓口委託手数料に係る消費税も年間約800億円を支払っている。最終答申案は今月中にも明らかにされ9月にはパブリックコメントも募集される予定だ。将来にわたり、確実に三事業のユニバーサルサービス義務を維持する仕組みの構築に向けた議論が大詰めを迎えている。

 郵政事業のユニバーサルサービス確保の在り方は、2012(平成24)年に改正郵政民営化法により日本郵政と日本郵便に金融のユニバーサルサービス義務が課されたために検討することとなった。
 13年10月1日に情報通信審議会の西田厚聡市会長に諮問され、今年2月からユニバーサルサービスコストの試算など本格的な検討に入っている。
 7月30日と8月13日に行われた郵政政策部会では2回にわたり、最終答申案に向けたたたき台が示された。村本部会長は「より成熟した作業を進めていかなければならない。第2次たたき台は了承されたため、これをベースに案文化する作業を進める」との方針を示した。
 たたき台によると、現状は日本郵便が赤字になっていないとの観点で、短期的には現在のユニバーサルサービスの範囲と水準を維持しつつ、日本郵政と日本郵便の「経営努力によって維持に努める」とし、国がそのための環境整備としてインセンティブを与える方策を検討するとした。
 日本郵政と日本郵便は経営努力に向けて、ICTの利活用やBPR(業務プロセス改革)の徹底による経営効率化、郵便局ネットワークの活用方策として、物流や不動産事業などの収益源多角化、地方創生への貢献、自治体や他企業、他金融機関などとの連携、地域金融機関が撤退した場合の郵便局との代理店契約、共同での資産運用会社の設立と投資信託商品を開発するなどを盛り込んだ。
 国が取り組むべき方策では、郵便局舎などに係る固定資産税などの特例措置、金融ユニバーサルサービスの安定的な確保のための消費税の特例措置、集配業務の効率化のために不在再配達の削減に資する大型郵便受箱の普及のための規格見直しなどを挙げた。
 この他にも、第2次中間答申で提言された郵便料金の届出手続の緩和、特定信書便の業務範囲の見直しが郵便のユニバーサルサービスに与える影響の継続的検証を記している。
 中長期的に検討すべきものとして、日本郵政と日本郵便の経営努力だけでは負担しきれないユニバーサルサービス維持のコスト分析と検証、人口減少や超高齢化など急激な進展など外部環境変化を背景とする郵便のサービスレベルの在り方や料金、第3種、4種など低廉料金サービスのコストの設定、英国やフランス、イタリアに見られる財政、税制措置を掲げた。
 政策部会で行われた関係団体からのヒアリングでは、日本郵便から「ゆうちょ銀行とかんぽ生命に課せられる限度額の引上げ」も要望されている。
 また、全国町村会や全国地域婦人団体連絡協議会からは「集配は集合受け箱でなく、戸別配達をしてもらいたい」、信書便協会は「ユニバーサルサービスコストについてどのくらい、どのようなコストがかかっているのかを明らかにして議論すべき」などの意見が出された。
 村本部会長は「現在は日本郵政、日本郵便が基本的には赤字になっているわけではないため、それを維持してほしい。中長期的には、例えばIT社会が非常に進むなどの環境変化が起き、赤字になり、どうにも動かないとなった場合の時のための方策はしっかりと描こうと思う」と語った。
 郵政政策部会で議論した郵政事業のユニバーサルサービスコストは、郵便局を地域ごとに約1000局単位とし、赤字地域の総額をユニバーサルサービスコストと見なすNAC法により算定した。その結果、郵便窓口を含む郵便事業は1873億円、金融窓口業務は758億円と試算され、郵便事業では収入に対する費用の収支が186億円、金融窓口事業は同様に収支が556億円といずれもかろうじて黒字を計上している。しかし、日本郵政グループはその額以上の税金や会社間窓口に係る消費税を支払っている実態がある。
 NTTの場合も同様に情報通信審議会でユニバーサルサービスコストが審議され、01年に制度が施行された。施行当時には制度は活用されなかったが、加入電話と公衆電話についてNTT東西の収支が赤字に陥ったため、05年から交付金という形でユニバーサルサービスの補てんが行われるようになった。加入電話の基本料、緊急通報、公衆電話の3種類をユニバーサルサービスコストと見なし、NTT東日本と西日本を合せた計68億円分を1台につきサービス利用者が1か月2円支払う仕組みとなっている。


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