「通信文化新報」特集記事詳細

 年/月

第6785号

【主な記事】

日本郵政グループ 企業価値向上
CSV(共有価値創造)で地域貢献
“CSR活動”も積極的にPR

 日本郵政グループが本業を通じて企業と社会の相乗的かつ持続的な発展を目指すCSV(企業と社会の共通価値の創造)への動きを加速させている。今秋予定される上場に向けてグループの企業価値を高めるための一環で、様々なステークホルダーとの協働による地域貢献活動なども中長期的な視点で進めている。全国に郵便局ネットワークを張り巡らせている存在自体が最大のCSR(企業の社会的責任)との考えに基づき、そうした土俵の上で多くのCSR施策に取り組んでいる。株価の前提にもなる将来価値向上を目指し、上場後も持続可能な事業展開を続け、さらなる発展につなげるためにCSR施策のPRに向けて、日本郵政ホームページの動画配信などを積極的に展開するという。

 CSVはマイケル・E・ポーターが提唱し、企業が追求する経済的価値(利益)と社会的価値を同時に実現する考え方で、世界中で企業経営の潮流になりつつある。企業が本業を通じた活動の中で、地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら競争力を高め、本業そのものを社会貢献事業として位置づけ、収益を上げる発想だ。寄付、ボランティア、文化活動など利益の一部を使い、社会に還元する従来のCSRの考え方と一線を画す。
 日本郵政グループの場合、もともと三事業のユニバーサルサービスの提供義務を持つことから、存在自体が社会貢献的な側面を持ち、これまでも自治体や企業、団体などと地域貢献事業に取り組んできたが、その意義付けは明確にされてこなかった。様々なCSR施策に取り組んでいるものの、対外的なPRはほとんどされず、社内報では紹介されても外向けに分かりやすく伝えられるケースは少なかった。
 こうした状況を打開し、多くのステークホルダーに活動を認知してもらい、企業価値を金額で示すアプローチだけでなく、持っている資産を活用し、新たな付加価値を生み出すアプローチとの両輪で価値の最大化を図ろうというグループ経営の動きが本格化している。
 グループの2014年版「社会・環境レポート」に掲載された「2014年度日本郵政グループCSR活動施策一覧」には、中長期的施策として進めていくCSR施策の筆頭に、郵便局長の地域貢献活動などを想定した「地域特性を踏まえた郵便局などの取組」を掲げた。
 また「認知症サポーターの養成」、日本郵便の「みまもりサービスなどの提供」「子ども110番の実施」「地域見守りに関する地域との協定の締結」「手紙を活用した世代間交流の支援」、かんぽ生命のラジオ体操の取組を通じた「健康増進への支援」などを挙げている。
 さらに、地域での次世代育成の支援では、日本郵政の「JP子どもの森づくり運動」への特別協賛、日本郵便の「手紙の書き方体験授業の開催」、ゆうちょ銀行の「小学生を対象とした金融啓発の実施」「貯金箱コンクールの実施」も盛り込まれている。環境負荷の軽減では、かんぽ生命の「ご契約のしおり・約款のWeb版提供に伴うCSR施策」なども含まれる。
 日本郵政広報部(CSR担当)は「企業価値を高める取り組みは、経済的価値と社会的価値をバランス良く高めていくことが重要だ。グループのCSR施策は中長期的施策、一般施策、広報施策と三つの施策に区分し、それぞれに推進している。このうち中長期施策が本業を通じた社会貢献を意味するCSVの考えに基づいている」と説明する。
 国連生物多様性の日(グリーンウェイブの日)となる5月22日には、岩手県山田町でJP子どもの森づくり運動「東北復興グリーンウェイブ(GW)」(主催=社会福祉法人三心会とNPO法人子どもの森づくり推進ネットワーク〔子森ネット〕)の植樹会が行われた。
 東北復興GWは、東日本大震災から1年半が経過した2012(平成24)年秋に開始。毎年、東北の被災地の園児が拾ったドングリの種を全国の幼稚園や保育園に送り、受け取った園児が苗木に育て、3年目に郵便のネットワークを通じて再び被災地に送り戻し、東北復興の思いを込めながらドングリの苗木を園児が植樹する取り組みだ。
 2回目となる今年は、岩手県山田町の山田町第一保育所、豊間根保育園、織笠保育園、船越保育園、大浦保育園の園児52人が参加した。東北復興GWには全国で68園が参加しているが、今年は31園から小さな苗木約130本が、懸命に育てた園児からのメッセージと共にゆうパックで贈られてきた。送付元の幼稚園・保育園では「苗木を見送る会」を開催し、地元の郵便局長が参加したところもあるという。
 豊間根保育園で行われた植樹会の開会式では、苗木のゆうパックを前に、豊間根保育園の菅原恵子園長、子森ネット理事で青い鳥保育園の岡村斉園長、山田町役場農林課の柏谷明久課長補佐、日本郵政の篠原勝則広報部長、地元の豊間根局の飛内栄生局長、織笠保育園保護者会の昆尚人会長の順にあいさつをした。
 式典後に車で10分ほど離れた場所に移動し、植樹が始まった。苗木を手にした園児らは一生懸命土を掘り「大きくなあれ」と大切そうに植え付けていった。
 東北復興GWは「JP子どもの森づくり運動」の一環になるが、日本郵政グループは子森ネットが取り組む活動に08年から特別協賛し、支援している。現在、多くの企業や団体が植樹に関する取り組みを進めているが、園児による植樹活動の支援は全国的にも珍しい。
 日本郵政の篠原勝則広報部長は、「東北復興GWは、地域社会と共に環境問題に取り組む企業を表彰するコンテストの『いきものにぎわい企業活動コンテスト』で、昨年『国土緑化推進機構理事長賞』を受賞するなどグループの企業価値向上につながっている。今回の植樹会は天候にも恵まれ、ドングリを植える園児たちの生き生きとした表情が印象的だった。全国各地で行われた『苗木の見送り会』には各地域の郵便局長などが参加してくれ、郵便局がさらに地域に根差す活動ができたと思う」と話している。
 日本郵政グループは今後さらにCSRの広報活動を積極的に展開する。今回の植樹会も映像収録し、ホームページに掲載。6月6~7日に行われた環境イベント「エコライフ・フェア2015」にブースを出展したほか、12月の「エコプロダクツ2015」にも出展を予定している。


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