「通信文化新報」特集記事詳細

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第6777・6778合併号

【主な記事】

ゆうちょ銀行新社長に長門氏
西室社長、国内外の業績を評価
郵便局に親近感も

 日本郵政の西室泰三社長は4月23日の記者会見で、シティバンク銀行の長門正貢前会長がゆうちょ銀行の新社長に就任する人事を発表した。西室社長は長門氏が富士重工業専務執行役員時代に他企業にはない発想により海外で企業評価を確立したことや、シティバンク銀行副会長時代にコーポレートガバナンスの建て直しを図る思い切った施策で組織の業績を大きく前進させた手腕を紹介。産業界と金融業界、日本とともにグローバルな視野を持つことを高く評価し、「組織をまとめ、率いていく力を持つ人物」を選任の理由に挙げた。また、長門氏と面談する中で「郵便局には親近感を持っている。郵便局ネットワークの大切さには同意を得ている」と強調した。

 西室社長は「長門新社長は旧日本興業銀行に長く勤め、その後、富士重工の取締役に就任し、最後は副社長まで務めた。直近はシティバンク銀行会長。金融界に精通していることは経歴からも理解できる。シティバンク銀行の様々な問題を一通り片づける仕事をされた。産業界でも富士重工の現在の業績を作り上げるのに大変貢献した。海外勤務も経験し、国際的な仕事にも精通している。総合的に見て、上場を控えるゆうちょ銀行の社長として最も適任な方に就任いただけることになった。6月の株主総会で日本郵政の取締役にも就任いただく」と喜びを語った。
 記者団からの「人選が難航した理由は。ゆうちょ銀行の運用力を上げるのに適当な人物という観点で選ばれたのか」との質問に対し、「非常に注目される人選だった。あくまでも社内選考を中心にし、最終的に決めたら口説き落とす以外にないとして決定した。運用強化の能力だけではなく、組織のヘッドになるには幅広い知識と経験がないと困る。預かり資産の運用とリスク管理の人材は新しいコンセプトで検討中。新しいチームを直接率いるより自らの組織の最も重要な部門としてそこも含めて指揮を執れる方として選んだ」と説明した。
 「長門新社長は国際派だが、ゆうちょ銀行という極めて国内の地域性に親和性も持つ会社にどのくらいフィットするのか。以前からの知り合いか」には、「フィットできる経験豊富な方だと思う。名前も顔も知っていたが、親しく付き合っていたわけではない」と答えた。
 「長門新社長への評価や期待したいことは」には、「組織を率いるのにふさわしい人物。富士重工が海外での企業評価を最も高めた時に先頭に立った。全世界の自動車メーカーの中であれだけ評価される車はないといってもよいほどで、そのことが損益の状況に表れている。中国もそれ以外の国もほとんどミニマムなアクセスしかしていない中で、他の自動車メーカーがかつてしたことのないことをやって見せたのは富士重工の素晴らしい方向付け。特に北米に焦点を当て、評価を確立させたことが正しかったのは明確に見てとれる。そのリーダーシップを執ったキャリアを尊敬している」と評価した。
 「ゆうちょ銀行とシティバンク銀行はATM提携などで他の外資系金融と比べると比較的関係が深かったと思われるが、その点を考慮されたのか」には、「まったく考慮していない。シティバンク銀行に長門新社長が行った経緯はシティバンク銀行を様々な意味で整理するために行ったものと理解している」との見方を示した。
 「新社長と政府との協力関係に期待するか」については、「政府の対応は日本郵政グループ全体として考えなければならないため、その部分で依頼するつもりはない」とし、一方、「金融界との調整は」には「日本の金融界で育った方のため、その意味では期待している」と語った。
 「ゆうちょ銀行が申請する住宅ローンと大企業向け融資の審査の状況と見通しは」には、「現状、見通しはついていない。甘い考えは持っていない」とし、「限度額引上げの見通しは。準備などしているのか」には「自民党で検討中のため、結果を待ちたい。甘い期待はしない方がよいと思う」と述べた。
 「シティバンク銀行の整理しなければならなかった問題とは何か」との質問には、「金融庁からの指導で、コーポレートガバナンスその他を立て直さなければならなくなった時に長門新社長が副会長として行き、三井住友銀行と三井住友信託銀行が日本の銀行業務を担う形で改善を図った。これは日本側で決めたのではなく、シティバンク銀行本社のトータル戦略で決めたことだが、結果的に業績がかなり良くなった。その意味では、これまでの処置は極めて成功している」と説明した。
 「ゆうちょ銀行と地域金融機関との提携の内容はどのようなものを想定しているか」には、「様々な形での提携を申し入れたり、申し入れられたりの状況が続いている」とし、「長門新社長が就任されて以降は」との質問には「金融業界に顔が広いため、手助けになっていただけるだろう」と期待を寄せた。
 「長門新社長の“引き受ける決意”をどう感じたか」については、「報酬のために仕事をするのではないという点が私の考えと共通する。ビジネス界で生きる中、私自身は集大成だと思っているが、長門新社長にとっても同じような気持ちではないかと想像している」ことを明かした。
 通信文化新報の「新社長は郵便局にどのようなイメージを持っていると感じられたか」には、「経歴だけを見ると極めて国際派と思われるかもしれないが、日本の学校を出て、日本の銀行に就職し、その中で育った方。家の近くの郵便局を利用し、親近感を持っていることを感じた。郵便局ネットワークを大切にしながら、新しい日本郵政グループの形を作る大きな道筋については全面的に同意をいただいている」と語った。


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