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第6757号

【主な記事】

「特定信書」A3判まで緩和
情報通信審 郵政政策部会 2次中間答申

 総務省の情報通信審議会郵政政策部会は12月4日、特定の需要があれば一般事業者も参入できる「特定信書便」について、大きさや重さで規制される1号役務と付加価値の高いサービスとして料金制限のある3号役務の参入条件を緩和する第2次中間答申(案)をまとめた。審議会は、10月8日から11月6日まで意見募集を行い、ユニバーサルサービス義務が課される日本郵便の郵便収入に与える影響などを試算。これまで長さ、幅、厚さの合計90センチ超が条件だった1号役務をA3判の用紙が折らずに入る73センチ超にすることで一般事業者の参入を促す。参入による日本郵便の郵便収入に与える影響は約19億円、電報などの料金1000円超を800円超まで下げることで約71億円に及ぶと予測している。最終答申は来年7月が予定されているが、ユニバーサルサービス確保の在り方が課題として浮上している。

 情報通信審議会郵政政策部会は昨年10月に「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」について諮問を受け、審議を継続してきた。今年3月の中間答申を受けて、特定信書便事業の業務範囲のうち、1号役務に関する大きさや重さ、3号役務の料金などの規制緩和について事業者から出された要望を受けて、ユニバーサルサービスに与える影響を検証してきた。
 審議会は今秋、「特定信書便事業の業務範囲の見直し等の方向性」について意見募集を実施。7個人・団体が意見を提出する中で、全国郵便局長会(大澤誠会長)、日本郵便、JP労組、郵政産業労働ユニオンから規制緩和に反対する意見が寄せられた。佐川急便と社団法人信書便事業者協会からは、緩和の要望が出された。
 第2次中間答申(案)は、これらを勘案した上で日本郵便の郵便収入に与える試算結果を公表。現在、1号役務で扱うことのできる信書便物、3辺の合計90センチ超を73センチ超にした場合に日本郵便が担っていた約19億円の市場に影響を及ぼすが、同社の郵便収入の0.15%程度と指摘し、郵便のユニバーサルサービス確保には支障を与えないと判断した。
 同様に3号役務も現在は1000円超と定められる1通の料金について、500円、800円の信書便物を追加した場合、日本郵便の郵便収入に与える影響を検証。500円での影響は郵便全体の収入に占める割合の3.36%にも達し、重大な影響を及ぼすが、800円超では同0.55%ほどとなり、支障をきたさない考え方を示している。
 しかし、日本郵便の2014年度中間期決算はマイナス349億円を計上しているため、1号と3号合わせて約90億円の影響があるとすると、収益を圧迫する可能性もある。
 意見募集には、全特から「郵便局ネットワークの維持に向けて必要な措置を講じていただくことを要望…(中略)特定信書便事業者によるクリームスキミング(採算性の高い地域や特定の需要者層のみに特化した役務提供)の余地が拡大することで、郵便のユニバーサルサービスの確保に支障が生じることがないようにしていただきたい」などの意見が提出された。
 また、日本郵便は「1号役務の拡大による影響について、現在の3辺計90センチ超の郵便物の収入額に基づいて影響額を19億円と推計されている。基準が3辺計73センチまで拡大されると、宅急便やメール便といった荷物の内容品として、特定の受取人宛てのダイレクトメールなどの信書を同封することが可能となることが考慮され、影響額は19億円にとどまらない可能性もある」などと長文にわたる意見を申し出ている。
 審議会はこのほかの規制緩和措置として①信書便約款に係る認可手続きの簡素化②信書便の業務委託に係る認可手続き③事業の健全な発達に係る業界の自主的な取り組みの促進―などを検討している。
 総務省郵政行政部は「ユニバーサルサービスコストの確保方策のための試算も同時に進めており、来年から審議を行い、7月に同時に最終答申を行う」と話している。
 特定信書便事業は、急速な人口減少、自治体や企業内部における文書送達事務のアウトソーシング掘り起しなどにより制度を開始した2003(平成15)年以降、一貫して市場が拡大。13年度末の1号役務参入事業者は355社、年間通数は約681万通、売上高は約44億円に達している。
 3号役務は同222社、約442万通、約68億円を計上している。事業者の内訳を見ると、福祉事業や情報サービス、印刷業など様々あるが、13年度末時点では77%が貨物運送業者。
 ヤマト運輸は特定信書には参入していないが、佐川急便をはじめ大手物流企業のほとんどが特定信書便事業を取り扱っている。



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