「通信文化新報」特集記事詳細

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第6750号

【主な記事】

正念場の時、企業価値を高めよう
全特 中堅若手代表者研修


 


 全国郵便局長会(大澤誠会長)は10月18日、東京麹町の都市センターホテルで全国中堅・若手代表者研修を開催した。来賓に日本郵便の髙橋亨社長と柘植芳文参院議員が招かれ、講話が行われた。大澤会長は「我々にとって正念場の時を迎えた。局長会が今、何をすべきかといえば、社員の一員として業績を上げ、企業価値を高めていくことだ」と強調。「これからの日本郵政」を題材に講演した髙橋社長は「事業は今、胸突き八丁。郵便物流事業は増収減益をいかに克服できるか、更なる増収とコストマネジメントが課題。窓口事業はウエイトの大きな貯金の推進が遅れている。下期というより、年内が勝負の時」と語った。柘植参院議員も地方創生などについて講演し、「地域は郵便局にとっての生命線だ。総務省も内閣府も『郵便局は大切だから、力を合わせて地方創生の柱にしたい』と言う。それに応えようではないか」と呼びかけた。研修では若手局長代表5人の実践発表も行われた。司会を森山真事務局次長が務めた。     

[大澤会長]年末始の業績が最重要
[髙橋社長]オール郵政のマネジメント改革
[柘植議員]地域の柱として活動を

 全国郵便局長会(大澤誠会長)が10月18日に行った全国中堅・若手代表者研修で、大澤会長(関東地方会長/富士見鶴瀬東)は「我々にとって正念場の時を迎えた。日本郵政の西室泰三社長は我々が上場にしっかり対応できるように、会社の内部整備を行った。局長会が今、何をすべきかといえば、社員の一員として業績を上げ、企業価値を高めていくことだ。11、12、1月の3か月は販売の需要期。特に貯金は待ったなしだ。貯金でお客さまを郵便局に呼び込むことで、保険も頒布会商品も売れる。この時期を甘く考えていると平成26年度の成果が確保できない」と力強く語った。
 また、「新商品を発信するのも本社一本というルールが定められているが、以前のように支社が一定のルールの下で、特色ある商品を販売できるような体制も望まれていると思う。基本的にそれぞれの事業形態に合せて組織を変えていくタイミングだ。そうしなければ瞬時に変わる時代のスピードに乗り遅れてしまう」と危機感をにじませた。
 「全特と会社との意志疎通の仕組みが若干変わる。支社ごとに一人、主幹統括局長という役職が設けられ、様々な会社からの施策を伝えるなど会社と全特とのパイプ役を担っていく。機能重視のマネジメントも徐々に進められていくが、方針に沿って頑張っていただきたい」と強調した。
 二村英男専務理事は「日本の郵政事業は独自の形態で、その特徴的なものに全特の存在がある。全特は調整機能や自主研修、組合的な機能を併せ持つ。私はもともと会社にいたが、日本では現場を分かる全特がなければ郵政事業は進められなかったと痛感している。会社と全特は見える景色が異なるが、大きな目的は一つ。状況に応じて変化することがあっても基本的な方向性は変わらない」と説明した。
 日本郵便の髙橋社長は「これからの郵政」と題した講演を行い、「事業は今、胸突き八丁。郵便物流事業は増収減益をいかに克服できるか、更なる増収とコストマネジメントが課題。窓口事業はウエイトの大きな貯金の推進が遅れている。4月以来、ゆうちょ銀行との一体営業を推進してきているが、まだまだ不足の状況。下期というより、年内が勝負の時」と語り、 「現実的かつ合理的な分析と対応が求められており、日次かつ個別の点検と丁寧なコミュニケーションにより、実力発揮できていない局と人のやる気と行動を働きかける全体化の取り組み」を訴えた。
 そのために、中間マネジメント組織の機能強化とコミュニケーション改革を推進し、オール郵政のマネジメント態勢を構築することを強調した。
 中間マネジメント組織の機能強化については、公社以来の紆余曲折を振り返り、「歴史的に形成された地区連絡会と部会に、権限と責任と業績評価をセットで付与していく道筋が大切だ。部会長、副部会長というレベルから営業も業務も、コンプライアンスも人材育成も任せておけという人材が切磋琢磨していく環境を整え、地区統括局長や副統括局長には自他ともに力量を認める人材が自ずと就いていくような状況となるよう、役員の力量アップを図る取組みを進める」と語った。
 また、機能重視のマネジメント改革については、ゆうパック分野で他社との競争が正念場を迎える中で、単独マネジメント局の局長が郵便物流分野に相当の時間とエネルギーを割いている現状を指摘し、同時に、資産運用商品や保険分野ではお客さまへの適切な対応が一層強く求められていることを指摘。
 「郵便物流部門、金融渉外営業部門と窓口営業部門がそれぞれの分野で勝つことが大切であり、それぞれの部門のマネジメント機能を高めていくことが求められている」と強調した。ただし、「組織とマネジメントや人事・キャリア形成は別ものであり、金融渉外営業部門でも業績を上げれば郵便局長並みなりそれ以上に処遇されること、複数の部門で活躍できる人材は部門を超えた異動をすることなど、より人材の活用が図られ、郵便局トータルの営業力も高まるもの」と説明した。
 今後は「発想を守りから攻めへ転換すべきで、郵便局ネットワークの議論についても『維持』ではなく『強化』なり『価値向上』を考えることが大切。郵便局は、建物だけでなく、そこで働く局長や社員、さらにはそこで提供される商品・サービスを含めて全体で機能するもののため、トータルで前進できるようにする」と方針を示した。
 「オール郵政の鍵を握るのは、他ならぬ郵便局ネットワーク。その局長である皆さんは、受け身の発想ではなく、上役を支え、組織を動かしていく気概を持ってほしい。上司は仕えるものではなく、使うものという。中堅・若手の皆さんが、ますます力を付け、広い視野で得た情報を組織的に伝え、上位の役員がよりよく機能するようになれば、郵便局ネットワークのマネジメントも力強く、強固なものとなる。それを推進するのは、中堅若手の皆さんだ」と期待を寄せた。
 一方、一部にある上場への心配論、特に、金2社の株式処分の進め方をめぐる不安については「金融2社の株式は日本郵政が保有しており、処分については改正郵政民営化法に基づき、日本郵政の経営判断事項とされている。その日本郵政のトップである西室社長は、一貫して郵便局ネットワークの大切さとグループ全体の求心力に言及されており、今般の日本郵便増資などの資本政策もその一環。心配には及ばない。信じましょう」と述べた。
 国会で総務委員会、行政業務監視委員会(理事)、災害対策特別委員に所属し、自民党総務部会の副部会長、情報通信戦略調査会の事務局次長、女性局次長、郵便局の利活用を推進する議員連携(郵活連=野田毅会長)事務局次長を務める柘植芳文参院議員が講演。
 「郵便局長の生命線は“地域”にある。地域の中でどう生きていくかがキーだ。新任局長によく話したのは、自分の地域はこういう形を作りたいという夢を持ってほしい。自らの地域を活性化し、地域文化を作る担い手となることができるのが郵便局長。この目的がなくなると郵便局長そのものが意味をなさなくなる。郵便局長の“長”という名前の重みをしっかりと理解してほしい」と語った。
 「日本の地域社会が壊れてきているが、地域活動に非常に懸命に取り組む局長とそうではない局長の格差が開いてきた。超高齢化社会に何を頼って生きていってよいか分からない状態で、最後の砦が郵便局。臨時国会では、国が幸いにも地方創生という大きなプロジェクトを組み、地方創生と女性の活躍と二つの御旗を掲げた。多くの先生から地方創生の中で郵便局をどう活用するのか質問が出る。総務省も内閣府も『郵便局は大切だから、力を合わせて地方創生の柱にしたい』と言う。それに応えようではないか。絶対に必要だということを皆さんの力で作り上げてほしい」と期待感を示した。
 「会社もそこに力点を置きながら、郵政グループの経営が安定的にできる体制をどう作っていくか懸命に取り組んでいる。全特もそれに呼応しながら同じ1管理者として責任を果たしていこうと頑張っている。成し遂げる中心が中堅若手。元気に明るく、一歩行動して地域の中で汗を流していただくことを心から願っている」と語った。
 中堅・若手の実践発表では、代表5人が日頃の取り組みなどを披露した。東北地方会宮城県北部地区の大場和樹局長(池月)は、「中若5年目を迎える今、地域活動の原点となったのが全特の中堅若手研修だった。当初はなかなか地域貢献活動に手が回らず、それを環境のせいにしていたが、全国から集まったやる気に満ち溢れた姿に刺激を受けて、指示待ちの姿勢を一新した」と強調。中若フォーラムの開催や、中若パートゴルフ愛好会を設立し、先人が築いた地域密着性の強い郵便局づくりにまい進する状況を発表した。
 東京地方会多摩東地区の菊池公一局長(府中小柳町)は「地域のイベントには積極的に参加しているが、それだけで本当に地域貢献といえるのか。どうすれば本格的に地域に根差した活動ができるのだろうか」と疑問を抱える中、自治会長や町会長などへ地域オピニオンへのアンケート調査を実施。アンケートをツールにあいさつができるようになり、夏祭り、老人会、防犯、防災活動への呼びかけをもらうなど地域との接点が大きく広がった。
 近畿地方会京都市南部地区の上田浩康局長(京都大原野灰方)は中堅・若手専門委員会を毎月開催。7月に中若フォーラムを開催した。「地域金融機関が積極的に地域に入っている。長い歴史の中で地域貢献を継続してやってきた郵便局長として、もっと頑張らなければならない」との決意の下、郵便局ファンを増やす活動に各地区会ごとに取り組んでいる。「行動に移すことが何より大切」と強調した。
 中国地方会石見東地区の井上寛康局長(口羽)は「超高齢化が進む典型的な過疎地域。郵便局は断じて地域のインフラとしての使命を果たすべきだ」と指摘。特に行政との連携を重要視し、「日本一の子育て村構想」の公募委員に就任した。仕事を通じて郵便局長としての顔を覚えてもらいながら地域住民とコミュニケーションを図り、一方、「てごぉする会」(お手伝いするとの意)を立ち上げ、新聞配達、草刈、田植え、稲刈り、雪かきなどを実践。配食サービスも計画している。
 九州地方会筑前東部地区の上野智史局長(飯塚川津)は、69局で構成される地区会のうち40局が中若という特徴を挙げて、「民営化以降に局長に就任したケースも多く、逆に地域への入り方を学びながら実践しなければならない」と現状を報告。会長から「中若で組織を盛り上げていってほしい」との意向を受け、地区独自で全員参加のソフトボール大会を実施し、会員同士のコミュニケーションを行い、また、10キロウォーキング大会は地域住民に呼びかけし、4年目。九州営業総合1位を勝ち取っている。
 佐中宗孝副会長(九州地方会長/田川平松)が「地域のためにを合言葉に地に足をつけた活動を願いたい」と締めくくった。


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