「通信文化新報」特集記事詳細

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第6745・6746合併号

【主な記事】

地域に貢献する郵便局
柘植議員 地方創生に新たな役割

 第2次安倍改造内閣が重要政策として進める地方創生の司令塔「まち・ひと・しごと創生本部」が9月3日に設置され、5日に事務局が発足した。省庁横断型で政策課題に取り組み、年内に都道府県に地方活性化の長期計画策定を促すなど長期ビジョンをまとめる。政府は、29日に召集する臨時国会で地方産業活性化などを柱に「まち・ひと・しごと創生法案」を提出する方針だ。こうした国の動きに密接に関わるのが郵政グループ中期経営計画「~新郵政ネットワーク創造プラン2016~」に盛り込まれる“地域密着型サービスの展開”。郵便局の143年にわたる地域貢献などの実績を基に企業や自治体と連携すれば、様々に有益なビジネスを生み出せる可能性が出ている。昨年、「地域に全力!地域を元気に!」をスローガンに初当選した柘植芳文参院議員は「郵政グループにとって千載一遇のチャンス」と強調する。





 安倍晋三首相は改造内閣発足以前の7月時点で、地域ベンチャー企業などの支援策を盛り込んだ地方創生に向けた法案を提出する方針を示していた。9月12日、石破茂内閣府特命担当大臣(地方創生)を中心に開かれた「まち・ひと・仕事再生本部」の初会合では、省庁の縦割りを排して大胆な政策をまとめる方針が打ち出されたもようで、創生本部は年内に50年後に人口1億人を維持する長期ビジョンと、来年度から5年間の総合戦略を策定するという。
 臨時国会では、各地域が明るい将来となるため、地方を活性化させる「まち・ひと・しごと創生法案」が提出される「地方創生国会」になる見通しで、法案を審議する特別委員会が衆参両院に設置される。政府の規制改革会議も地方活性化を目指す意見を10月にも募集。会議に地域活性化作業部会を新設し、まち・ひと・しごと創生本部、国家戦略特区諮問会議と連携する。
 「まち・ひと・しごと創生法案」は、地方産業を活性化するため、地域ベンチャー企業の支援策を盛り込む方針で、地方の特産品の開発や販路拡大を自治体と協力して後押しするなども柱の一つになる見通しだ。地方の中小ベンチャー企業が積極的に新たな事業にチャレンジできるように、法律の枠組みで後押しする。
 国の動きに先駆け、地域と深いつながりを持つ郵便局ネットワークを最大限に活かしながら、企業価値を上げようとしている郵政グループは、中期経営計画で経営方針の三つの柱の一つに「ユニバーサルサービスの責務を遂行」を掲げ、地域と共生するために自治体との連携や地域密着型サービスの展開、CSR活動の推進を挙げている。
 自治体との連携では郵便局窓口での公的証明書の交付、公営バス回数券などの販売、高齢者の生活を支援するひまわりサービス、郵便局を子どもの避難場所として提供する子ども110番、地域振興を目的とする連携などを掲げた。また、地域密着型サービスとして、高齢者の生活状況確認、郵便局のみまもりサービス、スーパーマーケットなどとの連携による買い物支援サービス、地域企業との連携によるカタログ販売などを挙げている。
 CSR活動では、災害時における被災者支援やFM放送を通じた周辺情報などの発信、電気自動車の導入など環境保全活動の推進がある。
 さらに日本郵便は昨年11月、郵便局から社内ベンチャーのアイデアを募集した。自由な発想で企画を出し合い、実現可能性を探っている段階だが、例えば「郵便局版エステサロン」や「老人ホーム」「ブライダルサービス」「ふるさとレストラン」「子育てサロン」など“トータル生活サポート企業”の先駆け的なアイデアが多く出されている。
 郵便局が企業や自治体とうまく連携できれば、これらを含めた様々な施策が実現可能なものとなってくる。地方創生に向けた動きの中で、全国郵便局長会(大澤誠会長)の指針にある「地域貢献」の役割を郵便局がビジネスとしても果たせていけそうだ。
 柘植芳文参院議員は「地方創生は、地域の再生を図りながら事業の発展を目指していくという、郵政関係者が長年にわたり進めてきたことに符号する政府の方針。政府任せにしてしまうのでなく、会社が経営の中で生かさなければもったいない話だ。地域防災や高齢者対策、失われてしまった地域コミュニティーの復活に向けて、郵便局が何をしていけば地域を活性化できるかを真摯に考えてほしい」と語った。
 また「以前に野田聖子前総務会長も言われていたが、人口が減少する中で強烈な高齢化の波に立ち向かわなければならないこの国を、子どもや孫に託さなければならない。多くの高齢者を支えるためにも、全国あまねく存在する郵便局は新たな役割を担い始めている。どこに住んでいても生活が営める“暮らしの質”を保証することが求められている。安心して暮らせる日本と地域社会の温もりを取り戻さなければならない」と指摘した。
 また、「ふるさと納税(任意の自治体に寄付することで、寄付した額のほぼ全額が控除される日本国内の個人住民税制度。一定の制限や限度がある)の意義なども踏まえて、特産品の開発、地場産業の振興などを考えてほしい。地方創生は郵便局にとって千載一遇のチャンス」と強調する。


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